潜在意識

潜在意識に否定形は存在しない

潜在意識の基本的なしくみとして、潜在意識には否定形は存在しないという原則があります。潜在意識は、思考のように、言語による理論的な動作は得意ではありません。言葉ではなく、イメージ、数々の画像を思い描くことや、もっと抽象的な感情、感覚、情緒などによって、動作しています。

脳内に画像を描くために、否定形は存在しません。頭の中に「ピンクの熊さんを思いうかべないで下さい」と言われたら、ピンクの熊さんが頭に浮かんだと思います。「美しい富士山を描かないでください」と言われても、「お母さんのことを思いうかべないでください」と言われても同じです。あなたの脳内には、美しい富士山の画像や、お母さんの顔が浮かんだと思います。

従って、潜在意識に直接アプローチするために、アファメーションをするとき、否定形は使わないということが大原則です。

例えば、テニスをしているときに、最初のサーブを失敗してしまって、2本目のサーブは絶対失敗したくないとき、多くの人は、「次はミスしないようにしよう」と心に誓うでしょう。しかし、ミスしないように、失敗しないように、と否定形で心に問いかけると、案の定、失敗してしまいます。1本目よりも2本目の方がプレッシャーがかかるので、精神的なコントロールをするのは、はるかに難しいです。2本目のサーブでダブルフォルトをしないためのこつは、「失敗しない」という否定形で宣言するのではなくて、「次はサーブを絶対入れる」と、肯定形で、心の中で宣言することです。さらに、インにいれるのかアウトを入れるのか、どんなサーブをコートのどの辺を狙って入れるのか、望むべき結果を、しっかりとイメージで描いて、頭の中に思いうかべて打つと、成功率が各段と上がるはずです。

ネガティブな潜在意識をやめるために、「不安な思いを手放しましょう」のような、アファメーションを推奨する人も多くいます。しかし、否定形が存在しない、という潜在意識を特徴を理解すると、このようなアファメーションはむしろ逆効果になることが、理解できるはずです。「不安」を手放そうとすればしようとするほど、あなたの意識は「不安」を感じて、さらに強く、「不安」な思いにかられることになるのです。

例として、ダイエットについて考えてみましょう。「太りたくない」とか、「甘いものを食べるのをやめよう」とか決心すると、体はもっと太ろうとするし、潜在意識は、もっともっと、甘いものを欲するようになります。

私は学生時代に、体操を少しやっていました。その当時は、500グラム体重が増えると、明らかに体が重くなったのを感じたので、体重管理をかなり厳格にしていました。毎日、体重計にのっていて、食べたいものを我慢して、スイトックに練習に励んでいました。しかし、体操をやっていた時期は、私の一生の間で、もっとも太っていた時期でした。正確に言うと、体操をやめてから、さらに太っていた時期もあったのですが、明らかに、体操をやっていたころが、最も太りやすくて、痩せにくい時期だった、ということは断言できます。

毎日体重計にのって、太りたくないと思いながら、食事をし、運動をすると、皮肉なことに、潜在意識はますます、太ろうとします。今から思うと、10代の成長期に、食事制限をしながら、食べたいものを我慢して、厳しい練習にのぞむなんて馬鹿げています。そんなことをしたら、モチベーションが下がるし、集中力も欠落して、けがもしやすくなります。

そもそも、人間の脳が正常に機能していれば、体はすでに十分な栄養をえられているのに、それ以上に何か食べ物を要求する、というようなことはありません。十分な食事をとっているのに、さらに、ケーキが食べたくなったり、カロリーが高いスナック菓子がやめられなくなったりするのは、どこか、脳の機能にバグがあるのです。食べすぎて太ってしまった、という人は、自分の精神状態がなんらかのストレスにさらされている、というはっきりとした実感があるはずです。そのストレスの原因を精査して、本来、人間がもっている、食欲を調整するバランス機能を、正常な状態に戻していくことが、問題を本質的に解決するための、有効なプロセスです。食欲だけをコントロールしようとしたり、無理やり食べたいものを我慢したり、という方法は、一時的な効果はあるかもしれませんが、精神的な苦痛を増大させ、根本的な解決にはなりえません。

否定形のアファメーションは、それが実行出来なかった時に、さらに自分自身をジャッジし、攻撃してしまいます。すると、さらに自分への嫌悪感が増大し、自己否定感が強くなります。ダイエットが出来ない自分に嫌気がさし、さらにストレスが増大し、その結果、さらにやけ食いをする、というような、負のループに陥るわけです。それだったら、むしろ、自分をジャッジしない方がはるかにいいので、出来ない自分を許す、否定的な感情をうけとめる、という方向性の方がはるかにましです。

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