太陰太陽暦と二十四節気
2024年の立春は、2月4日で、東洋の暦を使った占いでは、この日から、正式な2024年がはじまります。しかし、なぜ、立春の日を境にして、年がかわるのかについては、単純に旧暦を使っているから、と漠然に考えている人が多いような気がします。実際には、私たちが通常旧暦とよんでいる、太陰太陽暦のお正月は、2024年の場合は、2月10日であって、立春の日ではありません。そこで、今回は、立春の日と、旧正月の日付について、掘り下げたいと思います。
朔望月と太陰太陽暦
最近では、韓国や中国などの中華圏からの観光客がふえて、旧暦のお正月、旧正月の存在を意識することが増えてきました。旧正月は、私たちが通常お祝いしている、グレゴリオ暦、太陽暦の新年ではなくて、太陰大陽暦によるお正月のことです。日本でも、明治6年からグレゴリオ暦が正式に採用されるようになるまでは、太陰大陽暦 (天保暦)を、使っていました。
太陰太陽暦は、月の満ち欠けを一月とする太陰暦と、地球が太陽を一周する一年を定める、太陽暦を組み合わせたものです。太陰暦では、月の始まりの1日は、新月 (朔日)であり、14日か15日が満月 (望日)です。そして29日から30日にかけて、月が徐々にかけていき、太陰暦による一ヶ月、(朔望月)が終わります。
朔望月の期間は、29日か30日で、29日の月を小の月、30日の月を大の月と呼びます。平均の日数を29.5日とすると、29.5日 ×12か月で、一年の日にちは、およそ354日となります。地球が太陽の周りを一周する日にちは、約365日なので、およそ11日足りないことになります。そこで、3年に一度、閏月を設けて、一年を13か月として、調整します。太陰太陽暦では、通常の12か月ある一年では、354日間ですが、3年に一度は、閏月があるので、一年間の日数は384日、もしくは385日となります。
閏月と二十四節気
太陰太陽暦は、閏月があるかないかで、一年間の日数が大きく異なってきます。それゆえに、一年の季節の移り変わりを把握するのが、難しくなります。例えば、昨年は、4月の末には梅雨入りしていたのに、今年は6月になって、全くその気配がしない、というようなことが起こりえます。これでは、いつ田植えをしていいか、判断できません。農業を生業としている人が多い時代では、季節の区切りを把握できない大陰暦だけでは、生活できません。そこで、一年の季節の変化を把握するのに使用していたのが、二十四節気(にじゅうしせっき)です。
二十四節気(にじゅうしせっき)は、地球が公転軌道上のどの位置にいるかによって、季節の変化を把握する方法です。地球が一年間に一周する黄道を、24等分して、その分割点を地球が移動するときに、立春、雨水、など、季節を表す名称を付したものです。
春夏秋冬の季節を、それぞれ6等分して、一ヶ月の半分の期間で、それぞれの節目となる二十四節気が巡ってきます。例えば、2月の初めに、立春がきて、2月の20日ごろに雨水がきます。国立天文台が発表している、2024年の二十四節気の正確な日時は、以下のようになっています。
二十四節季は、立春、立夏などの節気と、春分、夏至などの中気を、交互に繰り返します。グレゴリオ暦は太陽暦なので、月の初めに節気、月の中ごろにくるものを中気がきて、その日付は、上記のように、年によって大きく変わることはありません。
一方、太陰暦では、毎年毎年、節気や中気の日付は異なります。さらに、月によって節気や中気が、規則正しく1回ずつまわってくる、というわけではありません。
閏月は、ただ単に一年間の日数を一定にするためだけでなく、このような季節の移り変わりのずれを調整するためにも、使われます。グレゴリオ暦では、4年の一度の閏年に、2月に29日までもうけて、調整しますが、太陰太陽暦の閏月は、常に同じ月であるわけではありません。原則として、閏月は、二十四節気の中気を含まない月とし、 その前の月と同じ月名に「閏」とつけて呼びます。例えば、五月に節季だけしかこなかったら、5月と6月の間に、「閏五月」を挿入します。
二十四節気と雑気
二十四節気は、紀元前4世紀ごろの中国で発明されたと言われていますが、現在の生活でも頻繁に使われています。さらに、日本独自の季節の移り変わりを表すのには、二十四節気の他に、雑節(ざっせつ)と呼ばれる区切りを設けています。
雑節には、季節と季節の間を定めた土用、梅雨入りの目安となる入梅 (にゅうばい) などがあります。雑節も二十四節気と同様に、国立天文台が日時を公表しています。
旧正月と二十四節気
二十四節気は、立春をはじまりとして、春夏秋冬という季節が一巡し、新しい年の切り替わりであると認識されています。しかし、同じように、太陰太陽暦の始まりを、立春の日として定めることはできません。なぜなら、太陰太陽暦の一ヶ月、朔望月では、必ず新月 (朔実) からはじまるという決まりがあるからです。従って、太陰太陽暦の一年の切り替わりも、必ず、新月の日でなければなりません。
太陰太陽暦のお正月は、雨水の直前の新月 (朔日)と決められています。雨水は、立春の後にくる中気で、だいたい2月の20日頃です。月は約30日間で、満ち欠けを繰り返すので、太陰太陽暦のお正月は、グレゴリオ暦の1月22日から2月19日の間に定められます。
2024年の立春は、2月4日で、雨水の日は、2月19日です。2月19日からさかのぼって、直近の新月は、2月10日になるので、2024年の太陰太陽暦のお正月は、2月10日になります。
このように、お正月の前に、立春がくる年のことを、年内立春と呼びます。逆に、お正月が先で、お正月の後に立春がくることは、新年立春です。30年に一度ほど、立春の日が新月となり、立春の日がお正月と重なる年がきます。これは、朔旦立春や立春正月などと呼ばれ、とてもおめでたいことだと言われています。